週末の早朝、自転車のグリップを確かめながらペダルを漕いでいた。
風に運ばれる微かな潮の香りと、草の匂いが混ざり合う。
道端には背の高いススキの穂が揺れて、まるで誰かが手招きしているよう。
取手駅を過ぎたあたりで、友人から届いたメッセージを思い出した。
近々、昔使っていたギアや部品を整理する予定だという。
パーツを手放す前に、どこかでちょっとしたお出かけを楽しもうと考えたのだった。
そこで選んだのが取手市の利根川河川敷。
かつて花火大会で賑わった河川敷は、静かな佇まいを取り戻している。
朝もやの向こうに見える取手緑地運動公園では、子どもたちの声が響く。
こちらではカヌーやSUPの体験ができるとのこと。
ライフジャケットを身につけた親子連れが、川面をそっとすべる様子がほほえましい。
いつかこうしたアクティビティに挑戦してみたいという思いが膨らむ。
しばらく川辺を散策したあと、旧取手宿本陣染野家住宅へ足を伸ばす。
歴史ある門構えに息を飲み、軒先の瓦一枚一枚が過ごしてきた時の重みを伝えてくる。
静かに開かれた門をくぐると、重厚な土間と何世代にもわたる足跡の残る畳が迎えてくれた。
その後、駅前通りを抜けてふらっと訪れたのがブルースターチョークスタジオ。
真っ白な壁に描かれたチョークアートは、まるで動き出しそうな色彩と筆致をまとっている。
店内でコーヒーを片手に、創作に没頭する人たちの真剣な眼差しを眺めながら、
いつか自分もオリジナルのイラストを描いてみようかと想像する。
お腹が空いたころ、さりげなく見つけたそば処やまひらへ。
つるりとしたのど越しの細打ちそばに、揚げたてのかき揚げが絶妙にマッチする。
濃いめに仕立てられたつゆがほっとする温もりをくれる。
箸を休めた瞬間、ふと友人の言葉を思い出した。
先日、使わなくなった部品を買い取ってくれる店を手伝った際、
昔のバイクパーツに込められた記憶や物語に興味が湧いた。
手放すだけでは味わえない、ちょっとした郷愁を感じる体験だった。
来週はその続きを探しに、市内のリサイクルショップを回るつもりだ。
最後に立ち寄ったのはキリンビール取手工場。
見学ツアーで学んだ醸造の工程は、思っていた以上に繊細で職人技が光る。
ホップの香りに包まれた試飲スペースで味わうハートランドは、香ばしくすっきり。
ギアを外してのんびり過ごす時間と、ひときわシンクロする美味しさだった。
帰り道、夕暮れ色に染まる利根川を背に自転車をこぎながら、
小さな部品ひとつにもドラマがあることを改めて思う。
週末のひととき、町歩きと趣味の世界が重なり合った気分を胸に刻んで家路についた。